病棟・治療について
「認知症治療病棟」は、その名の通り、認知症を持つ方に対して、専門的な治療を行う病棟として位置づけられています。病棟に所属する医師、看護師、介護福祉士、作業療法士、精神保健福祉士等の多職種で連携し、患者さんの治療やケア、リハビリテーションを行います。
具体的には、認知症の精神心理症状により、現在の生活環境での暮らしの継続が困難になり、入院治療が必要になった方に対し、医学的治療(薬物療法・精神療法)や生活機能の向上に向けたアプローチを行う等、集中的ケアを実施し、病状の安定を目指します。
その後、他機関との連携を行い、在宅や施設等の生活の場への退院を支援します。
患者さんの入院生活でどのような治療、ケア、リハビリテーションが行われていくかを見ていきましょう!!
主治医は、入院後の患者さんの様子を様々な生活場面で診察します。患者さんの認知症の症状や行動、心理、性格などは診察室では一部分しかわかりません。入院のきっかけになった症状がどんな場面でどのように起こってくるのか、現場で対応している職員からの情報も含め総合的に判断し、治療の方針を立てていきます。
病院では毎日カンファレンスが行われています。
各職種の専門的な視点で患者さんの評価を行い、情報を共有しながら、日々、治療方針を検討し、それに基づいてケア、リハビリテーションを行っています。
各専門職が交わることで、患者さんに合った包括的な支援に繋げています。
例えば薬物療法が始まった患者さんに対して…
※嚥下(えんげ)障害とは、食べ物を上手に飲み込めない状態のことです。
認知症の方たちには、トイレでの動作がうまく出来ない方や、トイレの場所が分からない方、訴えができない方など様々な患者さんがいらっしゃいます。
患者さん一人ひとりに合った援助ができるよう、グループに分けて援助を行っています。
(トイレ自立組、声かけ組、時間置きの誘導組、ベッド上での介助組など)
入浴を嫌がる方は少なくありません。嫌がる理由は何なのか?まずは把握していきます。入浴に関する一連の動作は認知症の人にとっては複雑です。
服の着方がわからない、洗い方がわからないなど、どこがわからないのか、逆にわかるところ、出来る事は何なのか、探りながら支援を行います。
出来ないところを介助し、出来る事を自ら行ってもらうことで、入浴に対する抵抗は少なくなってきます。
食事は、フロアごとの食堂に集まって提供しています。
食事の環境は非常に重要です。摂食嚥下機能の状態に合わせて、食事の支援の方法も違います。また、刺激を受けやすい方などは静かな環境が必要ですし、一人では食事だという事が認識できない方は、皆さんにつられて食べる事が出来るなど、テーブルの配置、組み合わせも工夫が必要です。
患者さんに合った環境、食事形態、ケアの方法をチームで共有し、安全にそして美味しく食事をとって頂きたいと思っています。
例えばこちらの患者さんは周囲の声や他者の動きに過剰に反応を示すため、窓側で外の風景を見ながら食事を摂取してもらう工夫をしています。
入院1年以内の患者さんを対象に、さまざまなリハビリテーションを行っています。
その一つである役割活動(タオルたたみ)をあげてみてもさまざまな機能を使っています。
歩行訓練は、歩くだけでなくコミュニケーションを取ったり、外に出て季節を実感する機会にもなります!
写真はコスモスの花を作っています。ひとつひとつ声を掛ければ出来る!どんな工夫があればできるのか、患者さんと「出来ること」を大事に。
出来たものは、病棟に飾ります。今の季節がわかる病棟の彩りになります。
入院患者さんの生活そのものをリハビリテーションと捉えて、起床から入床までの時間を、医師はじめ看護・介護・OTなど多職種で関り、機能の回復・安定に努めています。機能に合わせてグループ分けをし、患者さんの状態に応じて変更しながら、日々の訓練につなげています。
レクリエーションや体操などを通しての体力づくりや懐かしい歌や遊びなどを通して(回想法)楽しむことで、「なじみの仲間」「なじみの場」が出来ています。
また、ドライブなど季節に合わせた院外での活動も行っています。
この日の作業療法では、「月」についてレクリエーションを行っていました。1月を英語で何というかわかる人?の問いかけにたくさんの方が答えていて思わず拍手も♪
患者さんが日常の生活で目にしてきた物を置くことで、心が安らぐ面会室を設けています。
3病棟で行う介護では、患者さんの機能に合わせ、患者さんが少しでも安心した日常生活が送れるよう、日々チームで話し合いを行っています。また患者さんの「その人らしさ」を引き出すためにも声掛けを行い、患者さんの声に耳を傾け、コミュニケーションを大切にしています。
そうして、患者さんの思いを尊重し患者さん本人を中心としたケアを目指しています。